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Maddie Ashman 'Amber' — Don't stop at the yellow light. Running the line between 'love' and 'longing.' From delicate chamber music to a groove you feel in your body.|フウタ – note

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 “好き”と“憧れ”の境界線を走り出す、新たな転換点

 Maddie Ashman自身が「長い間ずっと、ドラマーと一緒に自分の曲を演奏するのが夢だった」と投稿していたように、新曲「Amber」は彼女にとってひとつの転換点を感じさせる一曲だ。
 これまでチェロや声を軸に、複雑なハーモニーや変則的なリズムを繊細に組み上げてきた彼女だが、「Amber」ではドラムが新たな推進力となり、その“美しき違和感”がより身体的なグルーヴへと変わり始めている。どこか室内楽的だった音楽が、ライブで身体ごと感じたくなる音楽へ。
 その変化には、複雑な音楽構造を強烈なグルーヴへ変える今年フジロックにも出演するANGINE DE POITRINEとも少し重なる面白さがある。
 歌詞で描かれるのは、ひとりの女性への“恋”と“憧れ”が入り混じった感情。自由に自分を表現し、自分の気持ちを理解している彼女に惹かれながら、「彼女をもっと知りたい」と同時に「私もあんなふうになりたい」と願う。

 タイトルの「Amber=黄色信号」を“立ち止まる/迷う瞬間”と読むなら、繰り返される「Runner runner」は、その迷いを振り切るように走り出す衝動にも聞こえる。

 繊細で複雑だったMaddie Ashmanの音楽が、ドラムを得て身体的に走り出す。そして歌詞の主人公もまた、誰かへの恋と憧れに突き動かされて走り出す。

 「Amber」は、その音楽と感情、二つの“走り出す瞬間”が重なった一曲なのかもしれない。
 そして今回「Amber」でMaddie Ashmanが長年夢見ていた“ドラマーとの演奏”を支えるのは、dodie、Orla Gartland、FIZZ、NOAHFINNCEらとの仕事で知られるロンドン拠点のドラマー、Mathew Swales。
 UKインディー/オルタナティブ・ポップの現場を支えてきた彼のドラムが、Maddieの複雑で繊細な音楽に新たな身体性と推進力を与えている。
https://www.instagram.com/mathewswales?igsh=MXNmMTNmMGszb3dnag==
最近のInstagramでの投稿で見逃せないのが、Jacob Collier とのセッション投稿だ。
倍音、純正律、複雑なハーモニー探究で知られるJacob Collierとの交流は、単なるSNS上の偶然のコラボレーションというより、“音程そのものを探究する音楽家同士”の接続として非常に興味深い。
 現時点で正式な共作発表はないものの、このセッションが今後実際の作品やコラボレーションへ発展していく可能性も十分に感じさせる。
 もう一つこれまでの彼女は、ギターと歌を中心としたソロパフォーマンスの印象が強かった。しかし最近ではドラマーを加えた編成でのライブも増え始めており、その変化がかなり面白い。
 特にパリ公演では、Ashman自身が「長い間ずっとドラマーと一緒に自分の曲を演奏するのが夢だった」と投稿しているように、彼女にとっても大きな転換点になっている様子がうかがえる。
 「さらに彼女の影響力は、ジャンルや国境を軽々と飛び越え始めている。2026年5月にリリースされたシングル版『Dark』に対し、プリンスも愛したグラミー賞ベーシスト・MonoNeonが自身のInstagramで反応。
 自らクォータートーン(四分音)ベースを弾き倒すジャム動画を投稿。これは彼女の『微分音ポップ』が、単なるアカデミックな実験ではなく、世界のトップミュージシャンを踊らせる“最新型のグルーヴ”として認識された決定的瞬間だと言えるだろう。」
 そしてその後、MonoNeonともスタジオで共演。「microtonal jam」と題したセッションを公開しており、Maddie Ashmanが影響を受けてきた微分音や実験的な音楽への関心は、ライブやコラボレーションにも広がり始めている。
 「彼女のルーツであるウェールズの伝承と、最新の微分音ポップが交差するメルクマール(指標)」
「Dark」ってどんな曲?
 一言で言えば、「迷い込んだ森の中で、境界線が溶けていくようなサイケデリック・フォーク」です。
音楽的な仕掛け
 マディの代名詞である「微分音(マイクロトナリティ)」が全編に効いています。ギターとボーカルのピッチが、標準的な音階の“隙間”をゆらゆらと漂うため、聴いていると平衡感覚が心地よく狂うような、独特の浮遊感があります。
歌詞とテーマ
詩人ジェッサ・ブラウン(Jessica Brown)との共作です。マディ自身の祖母ジェニファーが子供の頃、ウェールズの森で迷子になった実体験がモチーフになっています。
「ママ、どこにいるの? 怖いよ」「誰かに見つかったらどうしよう」 という幼い恐怖と、
「ここは別の世界(Otherworld)なの?」 という幻想的な感覚が混ざり合っています。
クレジットの注目点
共同プロデューサーにジョセフ・ハートウェル・ジョーンズ(FKA twigs等を手掛ける)が参加しており、初期のフォーク寄りな質感に、より現代的でエッジの効いた音響処理が加わっています。

なぜ今、シングルとして出たのか?
 2月のEP『Her Side』が海外メディア(NMEやThe Guardian等)で「2026年上半期のベスト」級の絶賛を浴びたことで、彼女の原点である2025年3月リリースの『Otherworld』期の楽曲にも注目が集まる。しかしBandcamp限定でのリリースとなっています。
 EP収録曲を2026年最新シングル・エディット版としてシングルカットしてリリース。
 今回のシングル版は、ミックスやマスタリングを最新のケヴィン・タフィー(『Her Side』も担当)が手掛けたことで、より解像度の高い「美しき不協和音」が楽しめるようになっています。
まずはこの映像を再生してみてください。説明より先に、目と耳で体感してほしい。
 ここまで読んでもらってもいまいちピンとこない部分があると思います。
 自分もそうでした微分音(マイクロトナリティ)ってなによくわからん?? 
 でも映像を見ると一発で「あ、これは普通じゃない」とわかる。曲中にフレットが動くギター、チェロのように弦を擦る奏法——全部、見てもらった方が早いです。
そして、シングルリリース直前の4月、マディは来日していました。
 Instagramに投稿された写真を見ると、和室でのレコーディングセッションらしき風景、サイゼリヤ前でのスナップ、旅行なのか、制作なのか、それとも両方なのか。
 キャプションには「love you japan 🇯🇵 日本、愛しています」とだけ。
 何をしていたのかは、まだわかりません。でも「次のプロジェクトは早めにリリースする」と語っていた彼女のこと、もしかしたらこの東京滞在が、近い将来に何かとして姿を現すかもしれないですね。​​​​​​​​​​​​​​​​
「日本、またねって言いたくない」
 マディ・アシュマン(Maddie Ashman)という名前は、2026年現在の音楽シーンにおいて、単なる「新進気鋭のシンガーソングライター」以上の意味を持っている 。
 ロンドンを拠点に活動する彼女は、チェリスト、作曲家、プロデューサー、そしてマルチインストゥルメンタリストとしての顔を持ち、西洋音楽の標準である「12平均律」の枠組みを根底から揺るがす「微分音(マイクロトナリティ)」をポップ・ミュージックの文脈へと持ち込んだ革命児である 。

 2026年2月6日にリリースされた最新EP『Her Side』は、彼女のキャリアにおける一つの頂点を示す作品であり、SNSでの爆発的な拡散と、音楽批評家たちからの熱狂的な支持を同時に獲得している 。
 本作において彼女は、数学的な精密さと、胸を締め付けるような情緒的なエートスを融合させ、聴き手に「初めて新しい果実を口にした時のような、甘美で酸っぱく、しかし正体のわからない魅力」を提示した 。
 マディ・アシュマンが2026年2月に世に送り出した『Her Side』は、単なる楽曲集ではなく、人間の深層心理と音響理論が交差する実験場としての側面を持っている 。
 本作は、彼女がこれまで培ってきた微微分音の探求を、より親しみやすく、かつ挑発的な「ポップ」の形式へと昇華させたものである 。
 語られない「彼女の側」タイトル『Her Side』が示唆するように、本作のテーマは「私たちが普段は口にしないこと、自分の中に抱え込んでいる親密で、時には恥ずべき秘密や満たされない欲望、抑圧された感情」に焦点を当てている 。アシュマンは、これらの「語られざる真実」を表現するために、あえて「標準から外れた」音、すなわち微微分音を選択した 。

 本作は、共同プロデューサーにガス・ホワイト(Gus White)を迎え、
https://www.instagram.com/guswhiteproducer?igsh=M2g1cmJvdWJ1dXh6
 ミキシングにはレオ・エイブラハムズ(Leo Abrahams)
https://www.instagram.com/leoabrahams?igsh=MXZ4aGM0cTdkOTN2Yw==
 マスタリングにはケヴィン・タフィー(Kevin Tuffy)という、
https://www.instagram.com/tuffmastering?igsh=MTR3N3ZremRqcGM4bg==
 現代音楽の最前線を支える布陣で制作された 。この制作体制が、アシュマンの持つ前衛的なアイデアを、高精細かつ聴き心地の良い音響作品へと結実させている。

 海外の批評メディア『Off the Record Press』は、本作を「見慣れたものが美しくも不気味な(uncanny)姿に変容する体験」と評し、彼女が単なる技巧派ではなく、感情の機微を音の微細な揺らぎに託す詩人であることを強調している 。
 本作に収録された7曲は、それぞれが異なる音楽的アプローチをとりながら、全体として「知覚と現実の乖離」という一貫したテーマを構築している 。
 音楽的特徴
浮遊感のあるハーモニーから始まり、中盤以降にブレイクビーツが導入される動的な構成。

 テーマ/インサイト
未解決の思慕(limerence)に伴う、執着的で絶え間ない思考の連鎖を描く。
 音楽的特徴
時計の刻みを思わせるビートと、内省的なヴォーカルが印象的なトラック。

テーマ/インサイト
変化への恐怖と、既知の自己に執着することへの痛みを掘り下げる。
 音楽的特徴
男性の視点と女性の視点の間に横たわる、親密さと審判の不協和音を描く。

 テーマ/インサイト
社会的期待が女性に強いる「沈黙」と、その裏にある叫びを音像化。
音楽的特徴
微分音を用いたピアノのリフから始まり、コーラル(合唱)的な広がりを見せる。

 テーマ/インサイト
宗教的な静謐さと、制御不能な情熱が同居する壮大な音世界。
音楽的特徴
アコースティック・ギターと電子エフェクトが織りなす、7分を超える瞑想的な大作。

テーマ/インサイト
ラテン合唱曲のような崇高さを持ち、日常の瞬間を崇高な体験へと変容させる。
音楽的特徴
あえて調律を外したピアノの音色が、不穏ながらも美しいワルツを奏でる。

テーマ/インサイト
社会の同調圧力に対し、内なる「侵入思考」がチェロの旋律として現れる。
 音楽的特徴
スウィーピングなオーケストラ要素と、複雑なリズムが交錯するフィナーレ。

 テーマ/インサイト
詩的でありながら共感性の高い歌詞が、聴き手の意識を強く引きつける。
 特に「Waterlily」について、アシュマンは「私たちは皆、自分だけの小さな内なる世界に住んでおり、そこは時として現実よりも現実味を感じさせることがある」と語っている 。
 この「内なる世界」を表現するために、彼女は完璧に調律されたピアノではなく、あえて不協和音的な響きを残すことで、感情の真実味を際立たせている 。

 本作に対する海外の反応は極めて熱狂的だが、一部には冷静な分析も存在する。

 Stereoboard: アシュマンの先衛的なアプローチを「毎日のように現れるカーボンコピーのようなアーティストで溢れた業界において、極めて個性的で歓迎すべき存在」と高く評価している 。一方で、曲ごとのヴァーサタイル(多様性)には欠ける部分があり、実験的な野心が楽曲の一貫性を損なっている瞬間があるとの指摘もなされている 。

 Off the Record Press: アシュマンの手にかかれば「ありふれたものが美しく不気味なものに変わる」と述べ、彼女の独創性を全面的に支持している 。特に歌詞の鋭さと、ヴォーカルが微分音の間を滑らかに移動する技術の高さを絶賛している 。

 Reddit (progmetalコミュニティ): 本作は「フリーク・フォーク」や「マイクロトナル・アート・ポップ」の領域に属しながらも、その複雑な構造からプログレッシブ・ロックのファンからも注目されている 。Bent KneeやCourtney Swain、さらにはPain of Salvationといったアーティストとの類似性を指摘する声も上がっており、ジャンルを超えた波及力を持っていることが窺える 。

 マディ・アシュマンの特異な音楽性は、彼女が辿ってきた多様な楽器習得の歴史と、特定の瞬間に訪れた「音の本質」への問いかけに端を発している 。
 イギリスのハンプシャー州に生まれたアシュマンは、音楽一家の環境で育った 。
 7歳の時に母親の影響でギターを始め、同時にリコーダーで作曲をしたり、歌を歌ったりすることに没頭した 。
 9歳の時、学校でチェロの演奏を見て「これをやりたい」と直感したことが、彼女の音楽家としての運命を決定づけた 。
 11歳でピアノとベースギター、そして10代になるとエレキギターを手にし、地元のオーケストラからロックバンドまで、あらゆる音楽の場に身を投じた 。
 驚くべきことに、彼女はかつてメタルバンドで「叫び(スクリーム)」の技術を習得しようと試みたこともあるが、喉を痛めて断念したというエピソードがある 。この経験は、後に彼女が自分の声を「精緻な楽器」として再定義する一因となった可能性がある 。

 ロンドンのゴールドスミス・カレッジ(Goldsmiths)に進学したアシュマンは、そこで自身の演奏スタイルをさらに深化させた 。
 彼女は「チェロをエレキギターのように弾き、ギターをチェロのように弾く」という、楽器の固定概念を打破するアプローチをとるようになった 。
I wrote a song for the strangers on a bench podcast !!! Thanks for having me @Tom Rosenthal 🙂 #strangersonabench #cello #singersongwriter #music
 彼女の音楽人生における最大のターニングポイントは、ある日のリハーサル中に訪れた。チェロの倍音(ハーモニクス)のみを担当していた彼女は、その倍音がピアノの音と微妙に合っていないことに気づいたのである 。

 「なぜ、この美しいはずの音が、完璧なはずの楽器(ピアノ)と合わないのか?」

 この疑問が、彼女を平均律(Equal Temperament)と純正律(Just Intonation)をめぐる深いリサーチの「ウサギの穴(rabbit hole)」へと誘った 。
 ピアノのように1オクターブを均等に12分割する「平均律」と、倍音の自然な比率に基づく「純正律」。その違いに疑問を抱いたことがきっかけで、彼女は音律そのものを問い直す深い探究へと踏み込んでいった。
 絶対音感(Perfect Pitch)を持っていた彼女にとって、標準的な調律が提供する音の幅は、あまりにも制約が多く、不自然なものに感じられたのである 。
 アシュマンのキャリアは、2017年に劇団「Slipshod Theatre」の音楽監督に就任し、完売公演『The Babushka』のオリジナル音楽を執筆したことから本格的にスタートした 。
 その後、映画、ポッドキャスト、美術展示会などのメディア作曲を手がける一方で、2021年にはデビューEP『Don’t Come Back』をリリースし、4万回以上のストリーミング再生を記録した 。
 その後、2022年にはBBC Radio 1のMaida Valeスタジオでのライブセッションや、BBC IntroducingのLive Loungeコンペティションでのファイナリスト選出など、イギリス国内での知名度を急速に高めていった 。
 また、トム・ローゼンタール(Tom Rosenthal)
 アルフィー・テンプルマン(Alfie Templeman)
といった人気アーティストのツアーサポートを務めることで、ポップ・シーンにおける自身のポジションを確立していった 。

• 微分音 (Microtone): 半音(ピアノの隣り合う鍵盤の幅)よりもさらに細かく分割された音のことです。
• 微分音音楽 (Microtonal Music): これらの音階を用いた音楽ジャンルを指します。
 アシュマンの音楽の核となるのは、単なる実験主義ではなく、音響物理学に裏打ちされた深い哲学である。彼女は、現代の音楽システムが失ってしまった「共鳴の純粋さ」を取り戻そうとしている 。
純正律(Just Intonation)への執着、彼女が探求するのは、音の周波数が単純な整数比で構成される「純正律」の世界である 。
(ここで、f_nは調律された周波数、f_0は基本周波数、aとbは小さな整数である)
 アシュマンは、第5倍音や第7倍音といった特定の倍音関係を用いて、独自の「音の格子(tuning lattices)」や「ハーモニック・スペース」を構築する 。
 彼女にとって、純正律は単なる数学的な選択ではなく、自然界や環境とのつながりを表現するための「自然な」手段である 。彼女は、標準的な平均律を「利便性のために自然の音を削ぎ落としたシステム」と捉え、あえてその「不自由さ」から脱却することを選択した 。
 アシュマンの非凡さは、これほどまでに難解な理論を、聴き手に「難しさ」を感じさせずに提供できる点にある 。彼女は、自身の音楽が「不器用で不活性な(fusty or inert)」ものになることを注意深く避けている 。
「もし複雑になりすぎたら、それはアクセス不能なものになってしまう。音楽は本来、自然で感情的なものであるべきだ」と彼女は語る 。
 彼女にとって微微分音は、知的なゲームではなく、新しい感情を掘り起こすための「メス」のような道具なのである 。
 マディ・アシュマンの音楽を支えるのは、彼女の特殊な楽器と、それらを使いこなすための高度な技術である。

アジャスタブル・マイクロトナル・ギター
彼女は、トルコ出身のギタリストであり教授でもあるトルガハン・チョウル(Tolgahan Çoğulu)が開発した「アジャスタブル・マイクロトナル・ギター」の重要な使い手である 。このギターは、フレットをミリ単位で手動で動かすことができ、演奏する楽曲ごとに最適な純正律のスケールを設定することが可能である 。
 彼女はこの楽器を用い、スライド奏法を組み合わせることで、フレットの間の「無限の音の隙間」を自在に行き来する 。
チョウルとのコラボレーションによる「Scarborough Fair」やキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードのカバーは、この楽器の可能性を世に知らしめる象徴的なパフォーマンスとなった 。
 マディ・アッシュマンは微分音(マイクロトーナル)音楽の探究者として知られ、その実験的なアプローチはしばしば最新の音楽テクノロジーと結びついて語られます。
 その象徴的な例が、革新的なアイソモーフィック・キーボード「Lumatone」への関心です。Lumatoneは、560個もの六角形キーが幾何学的に配置された特殊なコントローラーで、従来のピアノ鍵盤の枠組みを超えた自由な微分音表現を可能にする先進的な楽器として高く評価されています。
 しかし、この楽器は非常に高価であることから、彼女自身もその素晴らしさを認めつつ、現時点では導入を見送っている趣旨の発言を残しています。
 そのため、彼女の音楽制作においてこの機材が実際に使用されているという公的な記録はなく、現段階ではあくまで「理想の楽器」としての探究に留まっているようです。
 アシュマンの活動範囲は、ロンドンの小規模なライブハウスから、国際的なフェスティバル、そして学術的なレクチャー・パフォーマンスまで、極めて多岐にわたる 。

2022年

Latitude Festival / Aldeburgh Festival(UK)
大規模フェスでのパフォーマンスに加え、Britten Pears Artsの委託による音響インスタレーションを発表。
ライブアーティストとしてだけでなく、空間音響作家としての側面を示す重要な機会となった。
2022年

COP27(エジプト)
オーディオビジュアル作品『Through the Motions』を展示。
環境問題と音響理論を接続する試みで、音楽を社会的テーマと結びつける姿勢を明確にした。
2023年

King Place(ロンドン)
電子音楽家 FAUZIA との共同ショー『ETHERS』を上演。
d&b Soundscape技術を用いた多次元的音響体験を提供し、実験的サウンドアプローチを強調。
2025年11月

欧州ツアー(w/ King Gizzard & the Lizard Wizard)
 キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードのツアーサポートとして参加。
ベルリンやウィーンなど数千人規模の会場で演奏し、オルタナ/実験音楽シーンでの存在感を拡大。
2026年1月

Cafe OTO(ロンドン)
Plus Minus Ensembleと共に前作『Otherworld』を全曲ライブ演奏。
現代音楽的アプローチを前面に打ち出し、クラシカルな文脈とも接続。
2026年2月

Brunel Museum(ロンドン)
最新EP『Her Side』のリリース記念公演。
ロンドン地下トンネルという特異な残響空間でヘッドラインショーを実施。
空間そのものを“楽器化”する演出が話題となった。
 特に、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードとのツアーは、彼女のキャリアを大きく前進させた。
 サイケデリック・ロックのファンという、自身のリスナーとは異なる層に対して微微分音ポップを提示し、最終日のイェーテボリ公演ではステージ上でバンドと共にジャム・セッションを繰り広げたことは、彼女の柔軟性と即興性の高さを示している 。
 2026年の『Her Side』が「内面的な秘密」をテーマにしているのに対し、2025年3月にリリースされた前作EP『Otherworld』は、「ルーツと記憶」をテーマにした叙事詩的な作品であった 。
 このEPは、アシュマンの祖母ジェニファーの物語を軸に構成されており、詩人ジェッサ・ブラウン(Jessa Brown)による歌詞は、ウェールズの伝説や民話、そして3世代にわたる女性たちの口承に基づいている 。

horizon: 祖母の出生地である北ウェールズの風景を想起させる 。

moonlight: 孤独な母親との複雑な関係を描写 。
dark: ウェールズを離れた家族の移住と、異界への入り口を象徴 。

blossom: 70代になってからウェールズ語を学び直した祖母の決意と、神話上の女神ブロダイウェズ(Blodeuwedd)を重ね合わせる 。

bonfire: 孫であるアシュマン自身が、祖母の過去を理解しようとする旅の終着点 。

 この作品においてアシュマンは、言語が失われ、そして再構築される過程を、調律のズレとその修正という音楽的なプロセスと見事にリンクさせた 。
 アシュマンは、SNS(特にTikTokとInstagram)を単なる宣伝ツールとしてではなく、自身の音楽理論を大衆に提示するための「ラボ(実験室)」として活用している 。
https://www.instagram.com/maddieashman?igsh=MTV3Y2kyNWg1aWJzaQ==
 彼女の動画の多くは、まず「生(raw)」の状態の微微分音スケールを提示し、リスナーに一種の不快感や驚きを与えてから、それを美しい旋律へと昇華させていくという構成をとっている 。
 この「期待を裏切る」展開がSNSのアルゴリズムに合致し、1,000万回以上の再生と、ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)やキャロライン・ポラチェック(Caroline Polachek)、アンソニー・ファンタノ(The Needle Drop)といった著名なアーティストや評論家からの絶賛に繋がった 。
 彼女は、AIが生成する無難で中身のないコンテンツ(AI Slop)に溢れた現代において、人間の知性と身体性が生み出す「真に驚きのある音楽」が求められていると確信している 。
 一方で、彼女の成功は、微細な技術論に執着する「自称専門家の男性たち」からの批判を招くこともある 。
 彼女の音楽が「本当に微微分音と呼べるのか」という問いに対し、彼女は「私たちは今、そうした批判を深刻に受け止めるのではなく、笑い飛ばすことができる社会にいる」と語り、既存の権威的な音楽観に挑戦し続けている 。
 彼女は自身のプラットフォームを、音楽が「受け入れられるか、良いか」を観客と共に問い直す会話の場として機能させている 。
 これは、伝統的なクラシック界や学術界に閉ざされていた微分音音楽を、真に民主的な場へと連れ出したことを意味している。

 マディ・アシュマンは、21世紀の音楽が直面している「均質化」という課題に対し、物理的な音響理論と極めて個人的な感情という、二つの極めて具体的な武器で立ち向かっている 。

 最新EP『Her Side』で見せた、ポップとしての洗練と実験的な深みの融合は、彼女が単なる「ネット上の話題」に終わるアーティストではないことを証明している。彼女の音楽は、私たちの耳を「正しい音」という呪縛から解放し、不協和音の中にこそ真実の感情が宿ることを教えてくれる。
 今後、彼女がドラムなどのより強力なリズムセクションをライブに導入し、さらなる国際的な舞台へと進出していく中で、彼女が掲げる「美しき違和感」は、現代音楽の新しいスタンダードとなっていくに違いない 。マディ・アシュマンは、私たちがまだ知らない音の隙間に、新しい世界の地図を描き続けているのである。

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